役員報酬と役員賞与(法人税)

役員賞与の取り扱いにはご注意下さい。

同じ役員に対して支払う給与でも、役員報酬(定期的な給与)と役員賞与(臨時的な給与)では法人税の取り扱いが異なります。すなわち、法人税を計算する上で役員報酬は費用に落とすことができますが、役員賞与は全額費用に落とせないのです。(ちなみに、支給を受ける役員個人の所得税の負担は、役員報酬で受け取っても、あるいは役員賞与で受け取っても同じです)

ただし、役員報酬という名目で支給しても役員賞与とみなされてしまう場合があります。例えば、決算月に予想以上の利益が出てしまったため、その月だけ役員報酬を増額させた場合は、各月に支給される額を超える部分は役員賞与とされてしまいます。

なお、役員報酬を増額する場合は、株主総会で役員報酬の上限を定め、取締役会で具体的な支給額を決定する必要があります。株主総会議事録、取締役会議事録を作成することを忘れないようにして下さい。

役員賞与とみなされるもの(法人税)

役員賞与とみなされてしまうものにはご注意下さい。

役員賞与は法人税の計算上費用に落とせません。そこで気を付けて頂きたいのが、一般的な役員賞与の他にも役員賞与とみなされてしまうものがあるということです。

例えば、役員がプライベートでゴルフをプレーした際の費用を会社で負担した場合は、役員賞与とみなされます。なぜなら、その費用は本来であれば役員個人が負担すべきものを、会社が肩代わりしたものであるからです。

 

従って、その費用は役員賞与として法人税の計算上は費用に落とせませんし、役員個人についても所得税の負担が増えることになります。税務調査が入り役員賞与と認定されてしまった場合は、会社と役員双方で課税されてしまいます。

ただし、個人で負担すべき費用なのか、それとも会社で負担すべき費用なのかをはっきりと区別するのが難しい場合もあります。例えば、役員が会社負担で海外出張に行ったけれども、その出張中に観光をした場合はどうなるでしょうか?もしも仕事をしている時間よりも観光をしている時間の方が長かった場合は、出張費用の全部又は一部を役員賞与とみなされる可能性が高いと思います。

 

しかし、1週間の出張中に1日だけを観光に当てた場合は、少なくとも出張費用の全額を役員賞与と認定されることはないと思います。なぜなら、日本のビジネスマンで1週間のうち1日も休みを取らないという方は少ないからです。

海外出張の例に限らず、それではどこまでが役員賞与と認定されない範囲かと聞かれますと、実ははっきりとした基準はありません。従って、ケースバイケースで判断していくことになるでしょう。

社員旅行の費用(法人税)

会社で社員旅行をした場合、次の要件を満たしていれば「福利厚生費」として認められます。

1.会社負担額が少額であること。(おおむね10万円が少額の目安とされています)
2.旅行の内容が一般的なものであること。
3.旅行の期間が4泊5日以内であること。なお、海外旅行の場合、目的地での滞在日数のみで判断します。
4.旅行に参加した人数が会社全体の50%以上であること。なお、工場や支店ごとに行う場合には、それぞれの職場ごとで50%以上であること。

一方、次のような場合は「福利厚生費」ではなく「給与」とみなされて、従業員個人に対して給与課税されます。源泉徴収の義務が生じますので注意して下さい。

1.社会通念上認められる範囲を超える豪華な旅行
2.役員だけで行う旅行
3.旅行に参加できなかった者に対して金銭を支給した場合

なお、社員旅行に参加しなかった従業員に金銭を支給した場合は、以下のような取扱いになります。

1.自己都合で参加できなかった者に支給した場合
不参加の人への支給額だけでなく、参加した人に対しても不参加者への支給相当額が給与とされます。

2.会社都合で参加できなかった者に支給した場合
不参加の人への支給額だけが給与とされます。

従業員の食費を負担した場合(法人税)

従業員に対して食費を支給した場合、原則としてその費用は給与となります。ただし、従業員に支給される食事代であっても次のような費用は給与ではなく、福利厚生費として処理することができます。

1.残業、宿直等の食事
残業又は宿直、日直をした者(その者の通常の勤務時間外に行った場合に限ります)に対する食事代

2.食事補助
次の2つの要件を満たす食事補助の費用
@徴収している対価の額が、食事の価額の50%相当額以上であること。
A「食事の価額−徴収している対価の額」が月額3,500円以内であること。

健康診断の費用を支払った場合(法人税)

従業員に健康診断を受けさせた場合の取扱いについて解説します。

健康診断のための費用が次の要件を満たしていれば、福利厚生費として処理されます。
1.従業員のすべてが対象になること。ただし、一定年齢の者を対象とするなどのグループ分けもできます。
2.診断の内容が常識的な範囲内であること。
3.会社が直接診断料を支払うこと。

なお、診断料が著しく多額である場合や役員だけを対象としている場合は給与とみなされますので注意が必要です。給与とされた場合、診断を受ける従業員において給与課税されると同時に、会社において源泉徴収する必要があります。また、役員に対するものは臨時的な給与(=役員賞与)として損金不算入になります。

慶弔費を支払った場合(法人税)

会社で支払った慶弔費の取扱いについて解説します。

慶弔費を支払った場合、社内規定に基づく支出は福利厚生費、取引先等に対するものは交際費等になります。

1.福利厚生費になる場合
次の要件を満たした費用は交際費等に該当しません。
@従業員(従業員であった者を含みます。)又はその親族等の慶弔、禍福であること。
A一定の基準に従って支給される金品であること。

従って、交際費等にみなされないためには、事前に社内規定において対象者や支出金額を定めておいた方がよいでしょう。

2.交際費等になる場合
得意先、仕入先等社外の者の慶弔、禍福に際し支出する金品等の費用は交際費等に該当します。

3.消費税の処理について
お祝い金やお香典などの金銭の支出は課税仕入れになりませんが、お花を贈った場合には課税仕入れになります。何を贈ったかによって消費税の処理も異なりますので注意しましょう!

短期前払費用を利用して節税する(法人税)

費用を前払いすることによって節税します。

翌期分の費用を当期中に支払った場合、その費用は支払ったとき(つまり当期中)に費用として計上できますか?「原則としてできません」というのが答えになります。なぜなら、翌期分の費用はあくまでも翌期分の売上に対応するものであり、費用だけを先取りして計上することはできないからです。

しかし、「原則として」と書いたとおり例外があるのです。それが「短期前払費用」の規定です。すなわち、前払費用のうち地代家賃、保険料、支払利息のように継続して支払う費用については、その支払った日から1年以内のものであれば、全額その期の費用とすることができます。

例えば、3月決算の会社が、4月分の家賃を3月中に支払ったとしましょう。4月分の家賃は本来翌期の費用ですが、3月中に支払っていればその期の費用として処理できます。さらに節税に役立てようと考えた場合、3月末までに1年分の家賃を前払いする契約に変更してもらえば、翌期分の家賃をその期の費用として計上できるようになります。

なお、「短期前払費用」の規定を利用する際に注意すべき点があります。
(1)決算期末までに実際に支払うこと(未払いではダメです)
(2)毎月継続して発生する費用であること(1回限りのものではダメです)
(3)支払った日から1年以内の費用であること(2年分をまとめて前払いした場合は使えません)
(4)毎期継続して適用を受けること(一度適用を受けたら来期以降も同じ処理をして下さい)

建物の賃借にかかる諸費用(法人税)(消費税)

建物の賃借の際に支払う礼金、敷金、仲介手数料の取扱いについて解説します。

1.礼金の取扱い
礼金は契約した際に貸主に支払われますが、解約の際に返還されるものではありません。従って、借主においては全額費用となりますが、法人税では繰延資産として償却計算する必要があります。

 

その償却期間は原則として5年と定められています。ただし、契約更新時に更新料等の支払いを要し、かつ契約期間が5年未満の場合には、契約期間が償却期間となります。

なお、支出額が20万円未満の場合には、支出時に全額損金に算入することができます。
これらの取扱いは、更新時に更新料を支払った場合も同様です。

2.敷金、保証金の取扱い
敷金、保証金は解約の際に返還されるものですので資産計上します(費用に落とせません)。ただし、契約によっては契約時に一部返還しないことが定められていたり、期間の経過に応じて返還しないことが定められているものがあります。この返還されない金額は上記の礼金と同様の性質を有しているため、返還されないことが確定した時点で繰延資産として取扱われます。

3.仲介手数料の取扱い
賃貸借契約に際し、不動産業者に支払う仲介手数料は、繰延資産に該当せず、通常の費用になります。従って、支出時に全額損金になります。

4.消費税の取扱い
@礼金
事務所として借りれば課税仕入れになりますが、社宅として借りれば非課税仕入れとなり課税仕入れには該当しません。これは更新料を支払った場合や敷金、保証金が償却された場合も同様です。

A敷金、保証金
単なる預け金のため課税仕入れにはなりません。

B仲介手数料
事務所であっても社宅であっても課税仕入れになります。

レッカー移動された場合(法人税)(消費税)

従業員が業務中に車をレッカー移動された場合などの交通反則金等を会社で負担した場合、税務上の取扱いはどのようになるのでしょうか?

1.交通反則金道路交通法に違反した場合の交通反則金

罰金等に相当するものですので、法人税の計算上損金に算入することができません。また、消費税においても課税仕入の対象とはなりません。

2.レッカー移動料や保管料
違法駐車車両の移動、保管について要した費用の額は、罰金等ではありませんので、法人税の計算上損金に算入することができます。ただし、消費税においては、往来の妨げとなる違反車両を移動しなければならなかったことに対する一種の損害賠償金と考えられていますので、課税仕入の対象とはなりません。

3.業務と無関係の場合
交通反則金等が課された状況が会社の業務と無関係であれば、これらは従業員個人が負担すべきものです。それを会社が負担した場合にはその従業員に対する給与になります。

法人成りのメリット・デメリット (法人税)

個人で事業を行っている方で、そろそろ「法人成り」を検討しているという方は必見です。

「法人成り」とは、個人で事業を営んでいる方が、法人(会社)を設立してその事業を個人から法人に移行し、以後その事業を法人で運営することをいいます。今回は法人成りのメリット・デメリットを紹介したいと思います。

<メリット>
1.所得の分散
法人の場合、役員に対する給与は「役員報酬」として経費になります。また、その「役員報酬」について給与所得控除を受けることができるため、課税所得を圧縮することができます。

2.対外的信用の増大
対外的な信用力、取引先の開拓、優秀な従業員の確保に有利です。

3.退職金の支払い
個人事業の場合は、本人はもちろん、その親族に対しても退職金の支給は認められていません。法人の場合には、役員及び従業員に対する退職金は適正な金額であれば経費として認められます。

4.欠損金の繰越
個人で事業を行っている場合の欠損金の繰越期間は3年間ですが、法人の場合には7年間欠損金を繰り越すことができます。(個人、法人ともに青色申告の場合に限ります)

5.相続時の事業承継
個人事業の場合、事業主が亡くなると直ちに個人名義の預金が使えなくなるなど、遺産分割までの一定期間、業務に支障をきたす恐れがあります。また、相続争いに巻き込まれると業務が完全に停止してしまう可能性もあります。法人の場合には、法人の財産と個人の財産とが完全に切り離されているため、個人事業の場合に比べて影響が少なくなります。

6.消費税の節税
法人成りと消費税の関係については、次項で説明致します。

<デメリット>
1.設立費用
法人を設立するための手続きに時間と費用がかかります。

2.維持運営コスト
役員変更や決算承認などの重要な意思決定は、すべて株主総会や取締役会の決議を必要するため、決議内容について議事録を作成する必要があるなど維持運営に手間がかかります。

3.交際費課税
支出した交際費の一部(又は全部)を経費に落とすことができません。

4.赤字でも税金がかかる
赤字であっても、法人住民税の均等割(最低7万円)を支払う必要があります。

5.法人税申告書
法人税申告書の作成に手間(費用)がかかります。

法人成りと消費税(消費税)

個人事業者で「法人成り」を検討している方は、消費税の取り扱いにもご注意下さい。

法人成りして資本金1,000万円以上の会社を設立した場合、設立時から消費税の納税義務が発生します。一方、資本金が1,000万円未満の会社の場合には、設立当初2事業年度は消費税の納税義務はありません。つまり、最初の2年間はどんなに売り上げても消費税を納める必要がないのです。

上記の取り扱いを利用すると、法人成りすることによって消費税を節税することができます。個人事業の場合、前々年の課税売上高が1,000万円を超えていたら、消費税の納税義務が発生します。そこで消費税の納税義務が発生する前に、資本金1,000万円未満の会社を設立します。個人事業は法人成り(廃業)するため消費税の納税義務はなくなります。また、新たに設立する会社も設立当初2事業年度は消費税の納税義務はありません。すると法人成りすることによって、最初の2事業年度は消費税を納めなくて済みます。

なお、法人成りするタイミングには注意して下さい。個人事業を法人成りする場合、法人が設備や備品等を買い取る必要があります。反対の言い方をすれば、個人事業者が設備や備品等を法人に売却する必要があります。売却を行った年に消費税の納税義務がある場合、設備や備品等の売却価格に対しても消費税がかかってしまいますが、消費税の納税義務がない場合には、当然消費税を納める必要はありません。

 

従って、今年は消費税の免税事業者だが来年は課税事業者となる場合や、反対に今年は課税事業者だが来年は免税事業者となる場合は、法人成りするタイミングにも注意する必要があります。

設立1期目の消費税(消費税)

その会社に消費税の納税義務があるかどうかの判定は、前々事業年度の課税売上高を基準にして行われます。前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える場合は、消費税の納税義務が発生します。

設立1期目(及び2期目)の会社は前々事業年度が存在しないため、原則的に消費税の納税義務はありません。但し、資本金が1,000万円以上の場合は、例外的に設立1期目、2期目であっても消費税の納税義務が発生します。

なお、消費税の納税義務がなかったとしても、「消費税課税事業者選択届出書」を提出することにより、消費税の納税義務者となることができます。わざわざ消費税の納税義務者になる必要があるのかという疑問があるかもしれませんが、申告書を提出することにより消費税の還付を受けたい場合は、消費税の納税義務者になっておく必要があります。例えば、多額の設備投資を行う場合、あるいは外国向けの輸出売上高の割合が大きい場合などは、消費税の還付を受けられる可能性がありますので検討が必要です。

設立1期目の場合、1期目の事業年度末日までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。但し、「消費税課税事業者選択届出書」を提出した場合、届出後2年間は継続する必要がありますのでご注意下さい。

商品券・プリペイドカードの消費税の取扱い(消費税)

購入目的によって消費税の処理が異なります。

商品券、プリペイドカード(パスネット、図書カードなど)の譲渡は、消費税法上では非課税とされています。例えば、会社が、広告宣伝、謝礼等の目的でプリペイドカードを購入し、支給した場合、このプリペイドカードを購入した支出は、消費税法上非課税仕入として取り扱いますので、仕入税額控除の対象とすることはできません。

しかし、商品券・プリペイドカードのうち、その会社が自社で使用するものについては、その購入に係る支出は課税仕入として取扱い、仕入税額控除の対象とすることができます。例えば、交通費を支給する代わりにパスネットを購入し、自社の営業社員に支給した場合は、パスネットを購入した時点で仕入税額控除の対象とすることができます。

なお、自社使用の商品券・プリペイドカードの代金を購入した時点で仕入税額控除の対象にするためには、毎期その処理を継続していく必要があります。